短編小説~医者の恋~
平成23年 石川県
島田良平(33)は、院内でも一番の腕を誇る凄腕の医者である。
勤勉な性格であるため、困難でとても長い時間のかかる手術も断らず、引き受けていた。
2月 院内
島田は長い手術を終え、疲れ切った様子で自販機の前の椅子に座っていた。そこへ
「先生!手術、無事終わったんですね!」
と、後輩の医師、高木が話しかけてきた。
「なんとか無事に終わったよ…今日はもう仕事あがりだ。」
疲れでフラフラする頭を働かし、返答した。
「少し、隣いいですか?相談したい事があって…」
高木は島田に奢る分の飲み物を買いながら話す。
「いいぞ、座れ。」
島田は背もたれに頬杖をついて答えた。
「…島田先生は、前は県立病院で働いていたんですよね。」
高木は冷たい缶コーヒーを持ち、島田へ聞く。
「まァ、3年くらいで辞めたけどな。で、それがなんだって言うんだ?」
高木は少し恥ずかしげに話す。
「あの…それで。先生は、患者と恋に落ちた経験とか…あったりしましたか?」
島田は自分の記憶を辿り、そのような話をなんとか思い出そうとしていた。
「俺は無いが…同期の奴が同じような事を言っていたな。お前くらいの年だったが…」
そして島田は、高木の発言の意図を察したようだった。
「お前、まさか」
「はい…今、うちに入院している桃ちゃん、いますよね。僕…あの子の事が好きなんです。こんなこと、田沼院長にバレたらまずいですけど…でも、長いこと接しているうちに…」
担当ではないので桃の顔は知らず名前のみ知っていたが、島田は重い頭を背もたれに置き、天井を見ながら言った。
「お前が…そう思うならいいんじゃねぇかな。」
疲れきった様子で、答える。
高木は、島田が肯定的な意見だった事に、驚いているようだった。
「ありがとうございます…!島田先生に相談できて、良かったです!」
島田は、疲れ切ってぼーっとしたまま、二つ返事で答える。
「退院する前に、告白でもすればいいんじゃねぇか?」
高木は嬉しそうに、
「分かりました…!ありがとうございます、島田先生。」
島田はおうと答えると、
「じゃ、俺はそろそろ時間だから、帰るとするよ。じゃ、また明日な。」
「はい!ありがとうございました!」
島田は夕日に照らされ、病院を出た。
駐車場をフラフラと歩きながら、自分の車の運転席へ座る
「あいつ…そんなこと思ってたんだな…」
そう呟きながら島田は、田沼動物病院を後にした。
あとがき
島田医師、そうとう疲れていたようで。自分が勤めている病院が何科なのかすら忘れていたようです。
今日はいつもより少し、長めでしたね。今後も書いていきますので、よろしくお願いします。
以上、
さしみ