短編小説~余命~
県の東部に位置する林田総合病院では、変わった医者が働いていた。
医者の名前は、上原英明。この病院で10年ほど働いているが、特別医療の腕がいい訳でもなく、見た目もごく普通の医者であった。
しかし、上原には唯一の能力があった。
その能力とは、"患者の余命をピタリと当てる"というものである。実際に上原は多くの患者の診察をしたが、どの患者の寿命もピタリと、年代だけではなく何月何日かまで当てるのだ。
この能力は同僚や後輩たちに気味悪がられる一方、外した前例がないため、家族や友人へ別れを告げられると、老人の多い病院の患者からは意外にも好評であった。
4月 林田総合病院
春になり、暖かな日差しが差す日の事。
上原は、入院をしている鎌田勲(83)の検診へと向かっていた。
病室の戸を開き、カーテンを開けると、点滴を打たれ、ベッドに横になっている鎌田の姿があった。
「ああ、先生。そうでした。今日は検診でしたね。」
「はい、起き上がれますか?」
鎌田はもう細くなった腕で、力なくベッドから起き上がる。
「すっかり力も弱くなったなぁ…自分でも死期が近づいているのが分かりますよ。」
上原は検診を終えると、鎌田へと話しかけた。
「鎌田さんのおっしゃる通り…もう僅かしか残されてないようです。余命をお伝えします。」
「ええ、お願いします。もう娘や孫にも別れを告げてありますから、悔いはありません」
上原は告げた。
「残された時間はあと10...」
上原の言葉が小さくなったので、鎌田は聞く。
「10?10日ですか…?」
上原は、小さく続けた。
「7...6...5...4...」
あとがき
短編小説を書いたのはなんだか久しぶりな気がします。ぶっちゃけてしまうと連載してる海月天使の話は本当に誰も読んでいないような気がしてなりません…
宣伝のようになってしまいますが、どうかそちらも読んでいただけると幸いです。
では、当記事を読んでいただき、ありがとうございました
さしみ