さしみ海域

くだらない記事を気まぐれで書いています。

短編小説 ~二週目~

「勇者、、’ほも’よ。長い間我らを苦しめた魔王を討つべく、旅立つのだ!!」

 

城に仕える近衛兵である私は、王の横でその言葉を聞いていた。勇者は若く聡明な顔立ちをしていて、まさに勇者と呼ぶのに相応しい姿だったのだが…

「そちらの箱に武器や防具を入れておいた。きっと冒険の役に立つだろう。幸運を祈っているぞ。」

王がそう話し終えると同時に、勇者は箱を開けもせず、何を急ぐのか走って階段を降りて行った。

私が違和感を感じていたのは、勇者の身に着けている武器や防具だった。

どの武具も全部、この国に無いような、神話級の武具だったのだ。もう既に魔王を倒すことなど容易いほどの。

私はその勇者の動向が気になり、同僚としばらく仕事を代わって貰うこととした。

 

~平原~

昼の日差しが照りつける中、私は勇者の後を追うだけで体力を使い果たしていた。

まず、勇者は城から出た後、何の迷いもなく城下町の細い道をするすると進んでいた。我々衛兵が把握してないような道の数々を進み、とてつもない速さで町を抜けて行っていた。おそらくあれは、速度を上げる魔術の類だろう。宮廷魔術師でも扱えるか分からないような高度な魔術だ。

そんな事を考えている時、勇者が魔物の群れに襲われているのを見つけた。魔物の数は5体。大サソリ2匹に、スライム3匹である。

どのような戦いになるか見ていたら、瞬く間に剣の一振りで魔物は全滅していた。魔物は跡形も残らなくなっていた。勇者は魔物から小銭を拾い上げた後、またとんでもない速度で魔王の城の方角へと走って行った。

私は、ただただ茫然としているしか無かった。

多分、この世界の平和は大丈夫だろう。