さしみ海域

くだらない記事を気まぐれで書いています。

短編小説 ~二週目~

「勇者、、’ほも’よ。長い間我らを苦しめた魔王を討つべく、旅立つのだ!!」

 

城に仕える近衛兵である私は、王の横でその言葉を聞いていた。勇者は若く聡明な顔立ちをしていて、まさに勇者と呼ぶのに相応しい姿だったのだが…

「そちらの箱に武器や防具を入れておいた。きっと冒険の役に立つだろう。幸運を祈っているぞ。」

王がそう話し終えると同時に、勇者は箱を開けもせず、何を急ぐのか走って階段を降りて行った。

私が違和感を感じていたのは、勇者の身に着けている武器や防具だった。

どの武具も全部、この国に無いような、神話級の武具だったのだ。もう既に魔王を倒すことなど容易いほどの。

私はその勇者の動向が気になり、同僚としばらく仕事を代わって貰うこととした。

 

~平原~

昼の日差しが照りつける中、私は勇者の後を追うだけで体力を使い果たしていた。

まず、勇者は城から出た後、何の迷いもなく城下町の細い道をするすると進んでいた。我々衛兵が把握してないような道の数々を進み、とてつもない速さで町を抜けて行っていた。おそらくあれは、速度を上げる魔術の類だろう。宮廷魔術師でも扱えるか分からないような高度な魔術だ。

そんな事を考えている時、勇者が魔物の群れに襲われているのを見つけた。魔物の数は5体。大サソリ2匹に、スライム3匹である。

どのような戦いになるか見ていたら、瞬く間に剣の一振りで魔物は全滅していた。魔物は跡形も残らなくなっていた。勇者は魔物から小銭を拾い上げた後、またとんでもない速度で魔王の城の方角へと走って行った。

私は、ただただ茫然としているしか無かった。

多分、この世界の平和は大丈夫だろう。

ゲーム記事 ~クッパは死んでいるのか?~

スーパーマリオシリーズ」と言えば、今や世界では知らない人など殆どいないような、超有名ゲームシリーズでしょう。私も、マリオシリーズは大好きです。

シリーズの主人公である「マリオ」と、弟の「ルイージ」、「ピーチ姫」に「ヨッシー」等マリオシリーズには様々なキャラクターが登場していますが、今回記事で取り扱うのは、マリオの宿敵である「クッパ」です。

最近巨乳姫になったりしているあのお方です。

 

クッパ様の倒し方

マリオシリーズに一貫して登場する敵キャラであるクッパですが、初代「スーパーマリオブラザーズ」での倒し方はお決まりの通り、クッパのいる橋のロープを斧で切り落とし、溶岩に沈めるという倒し方でした。

この倒し方のパターンは、毎度2Dマリオのお決まりとなっています。(3Dランド等を除く)

炎を吐き出すクッパも、溶岩には耐えられないんだそう。ならなんで毎回城に溶岩敷き詰めるんですかね…

DSで発売された「ニュースーパーマリオブラザーズ」では、進化した画質で溶岩で苦しむクッパ様を見ることができたのですが、溶岩で皮膚が溶けたのか、骨になるクッパの描写を確認することができます。当時幼稚園児だった私には結構、衝撃的だったので今でも記憶に残っています。

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                骨になるクッパ

 

しかし、これはあくまでワールド1のボスです。(ワールド1のボスがクッパのパターンは結構よくある)

ワールド8の城まで行くと…

 

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で、出たー!!!!

クッパ様、骨になって復活です。正式名称は「ほねクッパ」。

城によくいる「カロン」と同じような原理なんでしょうか、溶岩を克服したそうでファイアボールが効きません。ですが倒し方自体は生前と変わりません。

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              ほねクッパ様、マリオテニスにて

 

その後はマリオカートを始めとして、すっかりメジャーなキャラになったほねクッパ。3Dランドから青い炎を吐き出すという設定が追加され、よりカッコよくなりました。

 

異常なまでの生命力

さて、前置きが長くなってしまいました。

ここで私が疑問に思ったことは…

どうやったら死ぬんだ…?

ということ。

クッパ様は何度も溶岩に突き落としたり、崖に突き落としたり、銀河ごと消滅させたりしても、何食わぬ顔で復活をしています。ここまで来ると、その生命力の高さはまるでジョジョのカーズのよう。(カーズは宇宙で動けなかったが、この方は動けてるのでもしかしたらこっちの方が上)

では、なぜクッパ様は毎度生きているのか、考えていきましょう。

 

最近の2Dマリオを遊んだ事がある方ならご存じとは思いますが、クッパ様は必ず、最終決戦の第二形態があります。その殆どが巨大化ですが、クッパ軍団の魔術師である「カメック」や、魔法の杖を持った「コクッパ」による魔法によって巨大化している描写がされています。

基本的に巨大化したクッパに毎度吹き飛ばされてしまうのですが、もしかしたらマリオに倒される度、クッパを復活させているのかも?(最近は昔を反省したのか、溶岩がそんなにないのでクッパ様は割と生きている。)

 

しかし、ごく稀な例なのですがクッパ様が死んでいるという描写がされているような作品が存在します。

それが、「ルイージマンション」です。

ルイージマンションキングテレサがラスボスの位置なのですが、最終決戦では絵の中でキングテレサが取憑いたクッパとの戦闘となります。

この時のバトルはなんとも異質で、クッパからキングテレサが出てくる時、なんとクッパの首が取れてルイージを攻撃してきます。(しかも、首だけになると氷のブレスを吐いてくる。)

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             ルイージマンションの占い師

 

マリオの遺品を渡すと、占い師は「クッパはマリオに倒された」と発言します。

続けて、「まさか、キングテレサクッパを復活させたとでも言うのか」とルイージに話をしてくれます。

「復活」というワードが出てくるあたり、やはりクッパはこの時点では死んでいたのではないかと考えています。首、取れますし。

ただ、キングテレサの絵の中での話ですのでルイージの戦ったクッパの体は、本物ではないのかもしれません。

真相は任天堂のみぞ知る…

 

 

 

さて、いかがでしたでしょうか。マリオシリーズについて真面目に考えるのも、なんだか楽しかったです。

ところで、クッパの体にキングテレサが入り込むということは実質クッパ姫とキングテレサ姫の百合セッk

 

 

 

                                    さしみ

 

 

都市伝説怪人になりたい!

 

こんばんは。さしみです。

読者の皆様が小学生の時、都市伝説怪人のウワサって、聞いたことありませんでしたか?例えば、下校時間が過ぎた後の学校のトイレになんか出るとか、そんな感じのやつです。

そんな都市伝説、一つや二つは聞いたことがあるのではないでしょうか。

有名な都市伝説と言えば、「口裂け女」ではないでしょうか。

口裂け女は、学校の帰り道、赤いコートを着たマスクを付けた女性が、「ワタシ、キレイ?」と聞いて、マスクを外すと耳まで口が裂けた女が子供を襲う…そんな感じのストーリーだったはずです。

海外では、「スレンダーマン」などが都市伝説に当たります。

スレンダーマンは長身で顔がない、子供をさらう怪人というものだった気がします。

 

私はこのような都市伝説の怪人達のイメージや、イラスト等を見て、思うのです。

 

カッコいい!!

と。

ですので、本記事のテーマは都市伝説怪人になろう

というテーマで書かせていただきます。

 

1 見た目

有名な都市伝説怪人達は、皆とても印象に残る格好をしています。

スレンダーマンは黒いスーツ。赤マントという怪人は、名前の通り赤いマントを着ています。

映画「IT」に出てくる怪人、ペニーワイズはピエロの恰好をしていますし、アメリカで有名なバニーマンという怪人に至ってはウサギの着ぐるみを着ていたりと、ものすごいインパクトがありますね。

怪人は皆、顔にマスクをつけていたり、人間の顔をしていなかったり、そもそも顔が無かったりします。そのまま人間の顔をした怪人の話は聞いたことがありません。

ですので、私はマスクを付けている怪人になりたいです。マスクの見た目は、ペストマスクなんかをチョイスしたいですね。

マスクに合わせて、服装は黒いコートで行きましょう。

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             ペストマスクを被る筆者

 

2 武器

子供を殺したり、傷つけたりする怪人は大抵、武器を持っているものです。

口裂け女も、手鎌を使って子供の口を裂いているとかいないとか…

赤マントも、子供をナイフで刺して殺していたはず。

しかし、ナイフや鎌というのはなんというか、ありきたりな気がするのです。他の怪人と武器が被ってしまうと、印象に残りづらい気がします。

そこで考えたのが、ハサミ。

ハサミを使う怪人って、あんまりウワサでは聞いた事がありません。他の怪人と被らないという点では、うってつけではないでしょうか。

 

…と思いましたが、ハサミを使うヤツ居ましたね。まぁいいか。

 

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          ゲーム 「クロックタワー」 シザーマン

 

3 出会う事によってどうなるか

 

これが無ければ、都市伝説怪人とは言えません。なんもなければ、ただの人です。ペストマスク付けた変な人です。

他の怪人は子供を攫ったり殺したりしますが、私は力があまり無いので子供だろうと殺すのに手間取りそうです。

となると、口裂け女のように「殺しはしないけど、ある程度ダメージを与える」くらいがいいのかなと思います。

ですが、持っている武器が武器ですので、あんまりでかいダメージは与えられません。どうしたものか。

というとき、私は思いつきました。

耳です。

背後からロープで拘束し、子供の片耳を切り取ってどこかに消え去る怪人。都市伝説としての怖さもバッチリだと思います。

 

4 名前

やっぱり印象に残る最大の物は、名前でしょう。インパクトのある名前を考えなければ、どんなにいい設定でもなかなかウケないというもの。

「ペストマスク男」という名前は、なんというか、長い。

怪人側としては、もっと語感のいい名前を付けてほしいものです。

ハサミ男」…

うーん、何かが違う気がします。口裂け女などと比べてあまり怖くなさそうです。

「耳切り男」

いいんじゃないでしょうか!名前だけで出会ったらどうなるかなんとなく分かるので、いかにも怪人っぽい名前だと思います。

 

5 まとめ

 

というわけで、怪人「耳切り男」のプロフィールを纏めてみました。

 

・全身黒いコートに、鳥のようなマスク

・片手には鋭い銀色のハサミと、ロープ

・出会った子供の片耳を切り落として、どこかへ去っていく…

 

どうでしょうか。大分、それらしい設定になったと思います。とても不気味ですし、何よりカッコいい!こんな都市伝説怪人に私はなりたいです。

 

というわけで、いかがでしたでしょうか。本記事を見て、楽しんでいただけたら幸いです。

皆さんのお子さんにも将来、怪人「耳切り男」の話をしてあげてください。私も喜んで向かいますので。

 

 

 

 

                                    さしみ

タイムマシンを作ろう!!!

 

皆さん、ごきげんよう

突然ですが、私はタイムマシンを作ることに成功しました。これは、人類初の偉業でしょう。教科書に載ってもいいかもしれません。

本記事では特別に、私のタイムマシンをご紹介したいと思います。

では、参りましょう。

 

 

このタイムマシンは、複数人まとめて使用することはできません。人間一人か、二人分ほどしか乗ることができないのです。

もう少し大きければスペースを確保するのは可能なのですが、私の部屋は狭いので、あまり大きなものは置いておけないのです。

そしてこのタイムマシン。なんと、燃料が必要ないのです!

バック・トゥ・ザ・フューチャーの「デロリアン」って、分かりますか?あれは映画のタイムマシンですが、燃料としてごみが必要だったはずです。しかし、私のタイムマシンは違います。なんの燃料も使わず、好きな時、好きな時間に使うことができるのです!

しかし、このタイムマシンは欠点があります。

タイムマシンと言えば、過去に戻ることができますが、このタイムマシンは未来に行くことしか出来ないのです。しかしこのタイムマシンの作用によって、未来に行ったあとは多くの人間は日々の疲れがある程度緩和され、気分がリフレッシュされるでしょう!

まぁ、そうでない時もありますが。

あと、忘れてはいけない付属の機械があります。この機械がないと、自分が未来へ行く時間を決めることができないのです!!つまり、自分が行こうとした時間より、先の時間へ行ってしまう!あぁ、恐ろしい!私も何回か経験したことがありますが、未来で何か予定がある時だと本当に大変です!

 

さ、皆さん。私のタイムマシンの紹介は、ここでひとつ区切らせて頂きます。

私はこれからタイムマシンを使い、未来へ旅立ちます。さぁ皆さん、また未来で会いましょう!

 

good night! おやすみなさい!

 

 

                                   さしみ

小説 異界の童

 

あれは、電車を乗り継ぎ、祖母の家に遊びに行った6歳の夏。

8月になり、身を焦がすような熱い日差しが照りつける日の事だった。

 

私は、祖母に川に遊びに行くと言い、一人で山の中の小川に歩いた。

山の中は木の葉によって日差しが遮られ、とても涼しく感じられた。

木の表面を触ると、鱗のようにザラザラとしていた。表面はとても硬かったが、同時に湿っている。

他の木を見ると、何か白い紐が巻き付いていた。

 

祖母の家から少し離れた小川へ着くと、苔の生えた岩に座りこんだ。

岩には小さな蟹がいたので、ひとつ拾い上げる。

蟹の足が暴れて手のひらで動く感覚は、なんだかくすぐったかった。小さな蟹を離すと、蟹は怯えるようにして岩の隙間に入りこんでしまった。

 

川の表面を見れば、父親の手のひらほどの大きな魚がひっくり返って浮かんでいた。なんの魚かは分からないが、どうにも、その銀の眼は私の顔を見ているように感じた。じっと、こちらの瞳を覗き込むように。

6歳の私には、それがとても気味悪く感じられた。

 

少し離れた場所へ下り、川沿いを歩いた。

川は深くなっていき、氷の解けた麦茶のような、冷たい水の飛沫が飛んでくる。

私は、先ほどの死んだ魚の眼が頭から離れなかった。

深くなっている所を覗くと、少し恐ろしさを感じた。

小さな滝の水音。五月蠅い蝉の声すら聞こえない森の中で、唯一その音だけが聞こえる。日差しの届かない森の涼しさが、私に恐怖感を植え付ける。

 

怖さを紛らわすためだったのだろうか。大きな石を両手で持ち、川へと投げ込む。

大きな水飛沫が上がると同時に、シャツの外から、何かが通り抜けたような感覚に襲われた。

背筋が凍り付く。

耳鳴りがする。

襲ってきた恐怖感に、たまらず逃げ出してしまった。

 

川から離れた森に行くと、横に倒れ木に寄り掛かった鳥居を見つけた。

限りない恐怖に支配されていたためか、山の神にすがろうとしたのか。私は鳥居の方へと走った。

やがて、苔の生えた木の祠に出会う。

小さな祠の柱には、最初に見た、白い紐が括り付けられていた。

祠の石畳の隙間から一輪だけ、綺麗な紅い花が咲いていた。

緑ばかりの森の中で唯一、違う色のものであった。

お守りのようにその花を手に取り、両手で包んで来た道を戻っていった。

 

来た道を戻っているはずなのに、明らかに地形が変わっていた。

川の水音もなくなり、森の静けさに混じった、自分の足音だけが耳に入る。

そのうち、自分の足音すら妙に感じた。

固い土と木の地面を歩いているはずなのに、まるで砂の上を歩いてるように足音がしない。

上を見ると、木漏れ日すら消えていた。

まだ夕暮れまでには時間があると思ったのに、もう夜のように暗い。

葉の隙間から覗いた空は、歪んでいた。

だんだん

だんだん森が暗くなっていく。

脛を指先でつつかれるような感覚が襲った。

つんつん

つんつんと、右足から。

足元は暗く、どんな形の地面を歩いているかすら分からなくなっていた。

森の中で、昼から唯一変わらないのはこの冷たさ。

明かりもない森の中を歩く恐怖に耐えきれず、木に座り込んで泣き出してしまった。

 

どこか遠くから、女の人の笑い声が聞こえる。

くすくす

くすくすと、笑っている。

また遠くからは、三味線のような、何か分からない弦を弾く音が聞こえる。

ぺんぺん

ぺんぺんと、か細い音で。

どうすることもできないと、紅い花を左手で握っていると、いつの間にか。横には何かが座っていた。どんな姿だったか、私には思い出すことができない。

 

何かは右手を静かに持ち、私を立ち上がらせた。その手はとても優しく、冷たい森で唯一の温かさであった。

何かは何も喋らなかった。ただ、温かい手で私の手を引いて森を歩いた。

たくさんの木の枝が掴もうとしてくる。

しかし、私の体に触れることができず、すり抜けていった。

とても恐ろしいものであったが、握られている温かい手によって、怯えることはなかった。

 

足場の悪い道を走ったことによって息を切らしているのに気が付いたのか、何かは小さな石の上に座らせてくれた。

優しい手の感覚が頭を撫でる。

先の恐怖感は嘘みたいに吹き飛んで、私はただ安堵していた。

もう笑い声も、弾く音も、聞こえなかった。

 

山を抜けると、とても広い畑へと出た。

外は暗い。

少し遠くへ、街頭の明かりが見える。

この畑には見覚えがあった。祖母の家の前の、大きな稲畑だ。

何もない、畑の中の道を歩く。

何かは何も話さない。

黙って私の手を引いていた。

 

祖母の家の玄関で、立ち止まった。

ここまでしてくれた何かにお礼をしようと、ポケットから紅い花を取り出す。

それを手に取ると、私に一つの人形をくれた。

木でできた人形だったが、左腕には白い紐が巻いてあった。

握っていた手が、離れる。

私はとても、寂しいように感じた。

 

後日、祖母にこの不思議な体験のことを話した。

そして、祖母にあの人形を渡すと、何も言わずに握っていた。

何か、とても大切な物だったのかと尋ねると、これは何年も前に亡くなった祖父のものだという。

私は祖父に会ったことはなかった。

 

祖母に連れられ、祖父の墓へと向かった。

その日は暑さはなくなって、なんとなく、あの森のように涼しい日だった。

祖父の墓石の前に座り込む。

「あら…誰が置いたのかしらね。」

祖母が言う。

私が立ち上がると、墓石の上には花が添えられていた。

 

花は、綺麗な一輪の紅い花であったとさ。

 

 

 

短編小説~余命~

平成26年 新潟県

 

県の東部に位置する林田総合病院では、変わった医者が働いていた。

医者の名前は、上原英明。この病院で10年ほど働いているが、特別医療の腕がいい訳でもなく、見た目もごく普通の医者であった。

しかし、上原には唯一の能力があった。

その能力とは、"患者の余命をピタリと当てる"というものである。実際に上原は多くの患者の診察をしたが、どの患者の寿命もピタリと、年代だけではなく何月何日かまで当てるのだ。

この能力は同僚や後輩たちに気味悪がられる一方、外した前例がないため、家族や友人へ別れを告げられると、老人の多い病院の患者からは意外にも好評であった。

 

4月 林田総合病院

 

春になり、暖かな日差しが差す日の事。

上原は、入院をしている鎌田勲(83)の検診へと向かっていた。

病室の戸を開き、カーテンを開けると、点滴を打たれ、ベッドに横になっている鎌田の姿があった。

「ああ、先生。そうでした。今日は検診でしたね。」

「はい、起き上がれますか?」

鎌田はもう細くなった腕で、力なくベッドから起き上がる。

「すっかり力も弱くなったなぁ…自分でも死期が近づいているのが分かりますよ。」

上原は検診を終えると、鎌田へと話しかけた。

「鎌田さんのおっしゃる通り…もう僅かしか残されてないようです。余命をお伝えします。」

「ええ、お願いします。もう娘や孫にも別れを告げてありますから、悔いはありません」

上原は告げた。

「残された時間はあと10...」

上原の言葉が小さくなったので、鎌田は聞く。

「10?10日ですか…?」

上原は、小さく続けた。

 

 

「7...6...5...4...」

 

 

あとがき

短編小説を書いたのはなんだか久しぶりな気がします。ぶっちゃけてしまうと連載してる海月天使の話は本当に誰も読んでいないような気がしてなりません…

宣伝のようになってしまいますが、どうかそちらも読んでいただけると幸いです。

では、当記事を読んでいただき、ありがとうございました

 

                                    さしみ

天使のようなモノ 03

翌日

窓からの景色は昨日とは打って変わって、雲一つない快晴であった。

自室から出ると、リビングの明かりが付いている事に気づいた。

妹はいつも徹夜をしているので、休日は起きるのが遅い。となると、昨日から増えたあいつだろう。

 

リビングに行くと、ダイニングの上に沢山の石鹸が積まれていた。

「…何してんの」

「朝食を取っております」

ガムを噛んでいる時のような音を立て、きくらげは石鹸を食べている。美味しそうに。

「もうなんでもいいや…」

「一口食べますか?この緑色やつが甘くて」

本当にこいつが分からない。

そういえば、昨日は妹の首の触手が取れなくて結局妹の部屋に押し込んだはずだが、どうしてこいつだけリビングにいるのだろう。

「なぁ、昨日の」

キッチンのカウンター越しに尋ねようとすると、まな板の上に千切れた青い触手がぽつんと置かれていた。

「あぁ、それ食べないでくださいね。消化できませんから」

俺は唖然とした。

どうしてそんな物を台所に置いたのか、自分の腕を引きちぎる以外に解決策はなかったのか、色々と聞きたいことがあったが言葉が出てこず、結果何も言えなかった。

人間は一度に様々な常軌を逸した行動を取られると、こう反応するのか。

「まぁまぁここ座ってください。私と喋りましょうよ」

きくらげは、いつ作ったのか、ほかほかと湯気の立つカップラーメンと箸をテーブルに置いていた。

 

時刻は午前8時

まだ薄暗い部屋を、きくらげの発光する体が照らしていた

「あー、その。千切った腕は大丈夫なのか…?」

「すぐ再生しますので、その点はご安心を。火にかければ勝手に蒸発します。」

どんなオモシロ構造になっているのだろうか天使は。

「ところで…妹様の部屋の事なのですが」

「あぁ、あのゴミ屋敷?なんか気になる事でもあったのか?」

「はい。あの、光る機械は何かと伺いたく。」

妹の部屋を頭に思い浮かべ、光る機械があったか考える。

思い浮かんだのは、一つしかなかった。

「パソコンのことか?」

妹の、やたらあちこち光るゲーミングPC。多分そのことだろう。

「はぁ、あれがパソコンですか。マイコンなら知っていましたが。」

何年前の話だろうか。マイコンなんて、死語もいいとこだ。

マイコンはもう日本に殆ど無いぞ…」

「え?!じゃあ、フロッピーももうないんですか?!」

驚愕した声で質問をする。

どの年代の知識で現代に来たんだろうか。

「フロッピーもない!もう●onyは作ってないから!」

「ははぁ…よく分からない物が増えましたね日本は…」

プレステや、薄型のテレビを見まわしながら呟く

「妹様は昨日あの…パソコン。そう、パソコンでゲームをされていたのですが。」

またいつもの様に深夜まで遊んでいたのだろう。隣の部屋にいるとよく銃声が聞こえてくる。

「それで、そのゲームを色々と教えて頂いたのですが、これがとても楽しくてですね。」

きくらげは続ける

「私には今まで無かった感情なのですが、コンピューターではなく生身の人間を倒すと得体の知れない快感が…!」

一日で、妹に対人ゲーマーに染められてしまったようだった。

人はこうしてゲームの沼にハマっていくんだなぁ…

「ほどほどにしろよ。うちの妹みたいになったらダメだぞ」

「ええ、でもせめて2000ハンマーを取るまでは」

 

僅か一日で、堕落していくうちの天使なのだった。